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緊急事態…前とどう違うの?

新年おめでとうございます。

年が明けて早々の、一都三県緊急事態宣言…なんだか今年もざわざわした1年になりそうです。

 

前回2020年4月の緊急事態宣言前後から、

いちおう公衆衛生分野の研究なんてものを10年以上たしなんできた店主ぜにこが、パン屋という立場でも皆様にお役に立てることはないか…と考え

専門家として&生活者として、独自の視点で感染対策コラムを綴ってまいりました。

 

ここしばらくは、あまり騒ぎ立てないほうがいいかなと思って静かに見ておりましたが

2度めの「緊急事態宣言」を受け、

今回はなにが違うのか?

今の生活をこれ以上変える必要があるのか?

という観点から、データを元に考えていきたいと思います。

今回注目するのは「罹患率」

最近、耳慣れない医療用語がたくさんニュースで飛び交うようになって

みなさんだんだん麻痺してきてるんじゃないかと思います笑

 

かくいう私も、まさかうちのこどもたちの口から「PCR」なんて単語が出ることになるとは…去年の今頃は夢にも思っていませんでした。

 

ちなみに、みなさんPCRってなんの略か知ってます?

Polymerase Chain Reaction です。

目的とする遺伝子(コロナでいえばウイルスの遺伝子)を検出するために、目的とする遺伝子を検体(採取した血液など)中で増幅させて検出しやすくする反応のことです。

体内で増幅させるわけじゃないですから、誤解してびっくりしないでくださいね笑

 

国立がん研究センターの用語集(以前ぜにこも編集に携わっていました)のPCRの説明が簡潔でわかりやすいと思いますので、こちらもご参照ください。

 

本来、PCRとは遺伝子を増幅する反応自体を指しているのですが、

PCRを用いて検査することもPCRって言ってるようですね。

はい、脱線したのでもとに戻ります。

タイトルにある「罹患率」が今回のテーマ。

 

まず、難しい漢字なので読み方から・・・

「罹患率」と書いて、「りかんりつ」と読みます。

(これ結構医学部でも間違って覚えてる人多いです笑)

 

「罹患」というのは、病気にかかること。

「率」というのは、疫学的には「割合」とは意味が違って、「速度」みたいなものを表します。

 

ちょっとややこしいですが「率」と「割合」について解説すると…

「割合」というのは、「ある一時点」でのデータを見ます。

たとえば、「今日」という一時点の東京都の感染者数を、東京都の全人口で割ったら「東京都の感染者割合」です。

 

じゃあ「率」ってなんだ?ということになりますが

「ある一時点」ではなく「ある程度の期間」にどのぐらいの人数が新たに罹患したのかを、

通常は「人口10万人あたり何人」という数字で表します。

 

ものすごくざっくり言えば、「患者さんが増える速度」みたいな指標です。

 

いまの東京都の罹患率は、だいぶやばい

札幌医大が公表している、【都道府県別】人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移のデータが、すごいです。

ものすごく貴重なデータが惜しげもなく公表されているので、ありがたく拝見することにします。

 

まず、今このコラムを書いている時点での最新データは1月5日現在の数字ですが

こんなことになっています。

7日間の人口100万人あたりの新規感染者数なので、これが先程熱く語った「罹患率」です。

東京都は100万人あたり492.5人(=10万人あたり49.2人)。

 

さて、これって多いのか少ないのか・・・

どう思います?

 

少なくとも、先週に比べて124.3%UPと書いてありますので、罹患率自体増えていることは間違いなさそうです。

 つまり、患者さんが増えるスピードがUPしてるってことです。

 

そして、この図のちょっと下には、サラッとこんなことが書いてあります。

 

政府分科会でのステージ4段階の指標:7日間の新規感染者数が10万人当たり15人を超えるとステージ3,25人を超えるとステージ4.

 

いまの東京都は10万人あたり49人以上なので、とりあえずステージ4とやらだということだけは数字からわかりますが、

そのステージってなんなの?

とわたしも思いましたので・・・政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の元資料をたどってみます。

国の資料ってなんでこんなに字が多くて見にくいんでしょ・・・といつも思いますが、それは置いといて

ステージIVってのは、

「爆発的な感染拡大を避けるための対応が必要な段階」となっていまして

IV以上のステージはないってことは、

これ以上行くとホントマジでやばいよってことです。

 

しかもいまの東京都は、だいぶやばいレベルIVの閾値である「10万人あたり25人」をはるかに超えて「10万人あたり49.2人」。

レベルIVの下限より、患者さんが増える速度が2倍ぐらいになっているのが現状だということ。

では、7日間で10万人あたり49.2人の新規感染って・・・実際のところどれぐらいの感じ?

 

概算ですが、東京都の人口を約1000万人とすると、

1週間で約5000人ずつ患者さんが増えるということになります。

しかもこの増加スピードは、上がり続けています。もっと増えていく。

 

 

ちなみに同じ札幌医大のデータから、4月上旬の罹患率を見てみると

東京都は10万人あたり7〜8人。

 

昨年4月も、今月も、同じ緊急事態宣言下ですが、

患者さんが増えるスピードは、文字通り一桁違っていたようです。

 

検査の体制が違うから、と言う話もありますが・・・

検査陽性になったら、放置できないので医療機関なりそれ相応の施設にて「隔離」をしなくてはならない。

そのキャパが、もうすでにかなりぎりぎりになっているわけで、

これ以上のスピードで患者さんが増えていったら本当にどうにもならなくなってしまう。

 

 

「医療機関の逼迫」とか言われても、日常生活には関係ない気がするかもしれないですが

もう病院からあふれるほどに、コロナウイルスに感染された方がいらっしゃるというふうに考えると

ここしばらくのちょっとゆるんだ感染対策では、自分を守れないんじゃないか…と思いませんか?

 

 最近、マスクをせずにパン屋に来店されるかたもまれに見られるようになり

消毒をしない方もちらほら見受けられ、

長期化するコロナ対応への「慣れ」「だれ」に危機感を覚えます。

 

いまこそ、

いままでやってきた手洗い・消毒はもちろん、

人混みを避けたり、外食を避けたりする必要性が高まっていると感じます。

そのための緊急事態宣言です。

 

小池都知事からは、以前と変わらない「不要不急の外出を控えて」という要請ですが

緊迫感が4月とは格段に違っていることをご理解いただき、

本当に人と会う機会を減らしていくことが必要だと思います。

 

そのためにパン屋は、外出しなくて済むように配達までしてるんですから・・・

どうぞ、みなさまご自身で可能な限りの対策を。

【参考リンク】

・国立がん研究センター がん情報サービス用語集 PCR

・国立がん研究センター がん情報サービス用語集 罹患率

・札幌医科大学 【都道府県別】人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移

・東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト 都内の最新感染動向

・内閣官房 新型コロナウイルス感染症対策分科会提言 今後想定される感染状況と対策について 令和2年8月7日