· 

続:公衆衛生って何なん? 雨の日は人が少ない・・・ってホント?

こんにちは。パン屋のぜにこです。

 

ウイルス感染が心配な今日このごろ、パン屋の前は公衆衛生の研究者なんてやっていたぜにこの目線で、

みなさんの疑問や不安にお答えしてみようと思います。

 

 

 さて今回は「雨の日」と「公衆衛生」について。

先日、お店のLINEから「雨の日は人が少ないから、感染予防の観点からは外出向き」という小ネタを出させていただいたところ

意外とみなさん反応してくださったので

ちょっと補足説明をしてみようかと思います。

 

実は、根拠があります。

「本当に、雨の日は人が少ないのか?」

という疑問を出発点として、

パン屋の売上データから、公衆衛生の手法を用いて解析したんです笑

 

 

何言ってんの、と思われましたね?

 

前回の「公衆衛生とか疫学って、何なん?」で、

公衆衛生の仕事とはこんなこと というイメージをご紹介したのですが

実際 我ら研究者は日々何をしているかと言うと・・・

データの収集と解析です。

 

ビッグデータなんていう言葉が世の中に現れるよりずっと前から

とにかく地道にカルテをめくって、何千人・何万人分ものデータをあつめて、

現状を分析して、問題を見つけて、解決するためにまたデータをあつめて・・・

というのがお仕事です。

 

ざっくりいうと、

ステップ1:現状をよーく見て、なにが『問題』なのか見つける(探索的研究)

ステップ2:見つかった『問題と思われるもの』が本当なのか確かめる(仮説の検証)

ステップ3:『問題』を解決する方法を提示する

てな手順で、みなさんの健康を守るために頭を使っております。

 

 

ここで少しわかりやすくするために

「たばこを吸うと肺がんになる」ことを証明しようとした場合を例に取ってみます。

 

ステップ1:肺がんが増えてきたので、肺がんになった人たちのバックグラウンドをよーく調べて原因となりそうなものをたくさんピックアップする

⇒たばこ、飲酒、男性、夜型の生活・・・とかいう『問題と思われるもの』が見つかる

 

ステップ2:『問題と思われるもの』が本当に肺がんの発症と関係あるのかひとつずつ確かめる

⇒たばこを吸うのは男性が多い、たばこを吸う人は飲酒することが多い、など、

『問題と思われるもの』がお互いに関係していることが多く(交絡という)

その中で直接に肺がんの発症リスクを上げることに関係しそう(因果関係がある)なのはどうやらたばこらしい、ということにたどり着く

⇒たばこに含まれる成分を使って細胞ががん化するか確かめたり、たばこを吸っていた量や期間と肺がん発症の関係を過去にさかのぼって数万人レベルで検証したり、とにかく直接の因果関係があることを確かめる

 

ステップ3:肺がんを減らすために「禁煙しよう」という政策を打ち出す

⇒実際みなさんが経験してきたように、電車や飛行機などに始まり世の中がどんどん禁煙になり、タバコのパッケージは半分ぐらいが「肺がんになるけどいいのね?」という脅し文句になっています

(愛煙家の方すみません💦💦)

 

これが、公衆衛生のお仕事。

長い年月と多くの人手をかけて膨大なデータを集めて、

ある意味「それ知ってた」というようなあたりまえのことにデータで裏付けをして、

みなさまの健康を守るための政策のバックボーンとする・・・

とっても大変で地味なお仕事です。

長くなりましたが、今日のテーマ「雨の日」に、ここでようやく戻ります。

 

「雨の日は外出する人が少ない」なんて

考えればわかるじゃないか。

だって出るのがおっくうだし。

・・・って思うでしょ?

飲食店であれば「雨の日はお客さんが少なくなる」はほぼ常識。

 

そんな「あたりまえのこと」に、

ほんとなのかな?と疑問を持って、データで裏付けるのがわれらの姿勢なのです。

 

 

この1年、パン屋をやってみて「パン屋は雨に弱い」気はしていました。

雨の日の翌日や、一時的な雨の前後は混み合うので、

雨の時にわざわざ買いにくることを避けていらっしゃるのでしょう。

これが上記の「Step1 『問題』を見つける」の段階。

 

でも、確かめないとわかんないじゃない!

そんなわけで、うちのパン屋は本当に「雨が降ると人が減るのか?」を解析してみました。

Step2 開始です。

 

こちらのグラフは、今年に入ってからの「1日のお客さんの数」を、お天気ごとに集計したものです。

平日と土日は人の出方が違うので、分けて解析したのですが

雨ではない日を基準にすると、

平日・土日を問わず 明らかに雨の日はお客さんの数が少なくなっていることが見て取れます。

 

ついでに解析してみたのですが

雨の翌日は、お客さんの数が雨の日の2倍になることも数字でわかりました。(細かいのでデータは省略)

 

 

やっぱり、みなさん雨の日は外出をひかえて、晴れたら出る・・・という行動パターンになっているわけです。

さてここで「Step3:『問題』を解決する方法を提示する」に移行します。

 

 

先日来「雨だから人が少ないよ」「雨の翌日だから今日は混むよ」というメッセージをLINEで発信していますが

これは上記のデータに裏付けられた情報です。

 

「密」を避けなければならない今、この混雑情報はお客さんにとって大きな意味があるはず。

 

雨という面倒を乗り越えてでも、感染のリスクが低いことをとるのか、

やっぱり晴れた日のお昼にパン屋さんに行きたい♪という気持ちを取るのかは、

もちろん個人の自由です。

 

 

でも、せっかくなら

みなさんに考えて行動する習慣をつけていただきたい。

したいことではなく、すべきことを。

 

お説教みたいになっちゃいましたが、

実はこんな気持ちでLINEしてたりします😅

変なパン屋ですみません!

これからも懲りずにお付き合いくださいませ〜

コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    伊藤 雅幸 (火曜日, 19 5月 2020 13:13)

    いつも楽しく読ませていただいております。流石分析のプロという感じで分かりやすいです。
    最近、家族が韓流ドラマにハマっており、その中でゼニ子さんがコメントした内容と同じようなことを言ってました。テレビ局の記者のドラマでしたので、みたいニュースと見せたいニュース、どちらが大事なのか考えろというものでした。
    人は確かに、楽しい方や楽な方を選びますが、辛い現実を選ばなければならない時もあります。
    コロナウイルスが早く終息するように祈るばかりです。
    次のコラムを楽しみにしていますよ。

  • #2

    K,MATSUI (火曜日, 19 5月 2020 13:31)

    大変✋、発酵に?‼…お時間のかかる研究ですねっ(;^_^A、お疲れ様です(´▽`)ノ。ある日突然(ノ´・ω・)ノの変異(忙し)��もあるでしょう!…応援✊しております。大変為になる☝️お話しです。<(_礼_)>