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そもそもウイルスって、何なん?

こんにちは。パン屋のぜにこです。

 

ウイルス感染が心配な今日このごろ、パン屋の前は公衆衛生の研究者なんてやっていたぜにこの目線で、

みなさんの疑問や不安にお答えしてみようと思います。

 

 さて今回はめっちゃ根本的な疑問。

「そもそもウイルスって何?」という、わかっているようでわからない深遠な世界に踏み込んでみます。

なんでこんなテーマにしたかと言うと・・・

先日、知人からいただいた感染対策グッズに「バイキン対策」と書いてありまして。

 

ウイルスなのにバイキン?と、ものすごーく違和感を持ったので、

もしかして「菌」と「ウイルス」の違いって意外と知られてないのでは??と思ったのがきっかけでした。

「菌」と「ウイルス」

さて、菌(以下、細菌と表記します)とウイルスの違いって何でしょう。

ものすごーく雑に言えば、細菌は「生き物」で、ウイルスは「生き物ではない」のです。

厳密に言うと、ウイルスは生き物と生き物ではないものの中間・・・とされています。

 

そうすると「生き物って何?」という、なにやら哲学的なニオイがしてきますね・・・

 

そういえば「生物と無生物のあいだ」という名著があります。

冷静と情熱のあいだ」も好きですが、そっちではありません。

生命とはなにか、に挑んだ科学者たちの足跡を語った、科学書ではなく物語のような本です。

 

科学の歴史をさかのぼっても、ずっと「生き物」の定義は揺れ動き続けてきました。

現在でも、宇宙生命体をからめて「生き物」の定義はなにか、議論は続いているところですが・・・

 

ざっくり言って下記の2つの特徴を持つもの、とされています。

 

◯細胞を基本構造としている(細胞膜でつつまれていて、その中にDNAやRNAなど遺伝物質がある)

◯自己複製ができる(自分で自分自身をコピーして増える)

 

細菌は、1つの細胞からできた「単細胞生物」で、

だいたい1マイクロメートルぐらい(1ミリの1000分の1)。

ずっと大きいヒト細胞などにくっつき、その中や表面で、自分で自分のカラダの要素をコピーして、分裂し、増殖します。

1回の分裂で、倍に増えます。2回分裂したら4倍。

そんなわけで、「細胞を基本構造として」いて「自己複製」する細菌は「生き物」です。

 

 

じゃあ、ウイルスは?

 

ウイルスは、細胞という構造を持っていません。

「細胞膜」というやつがありません。

細胞膜というのはリン脂質という油でできた、ふうせんみたいな膜なのですが、

ウイルスは「カプシド」と呼ばれるタンパク質のカラを持っていて、その中に遺伝情報であるDNAまたはRNAが格納されています。

遺伝子らしきものとカラだけでできた、とっても簡単な構造なわけです。

 

 

え、でもこの頃よく見るウイルスの写真、膜みたいなのがあるよね?

と思ったあなた。さすがです。

 カプシド殻の外側に、エンベロープという外膜を持つものもいます。

あ、ややこしくなってきましたね・・・

 

ちょっと図にまとめて見てみましょう。

これはラッパのマークの大幸薬品さんのHPからお借りしてきました。

 

図の引用:大幸薬品HP 病原体:ウイルスと細菌と真菌(カビ)の違い より一部改変

近頃よくお見かけするコロナウイルスの電子顕微鏡写真は、トゲトゲがついたボールみたいですよね。

まさに、上図にあるようなやつ。

コロナウイルスもエンベロープをもったウイルスというわけです。

 

ここまできて、するどい方は「細胞膜とエンベロープって何が違うの?」って思いましたね?

じつはエンベロープは、宿主(いまのコロナウイルスで言えばヒト細胞など)の細胞膜を「借りてきた」もので

自分で作っているものではありません。

ここが、細胞膜を自分で作る「細菌」との大きな違いです。

 

 

そして、細胞膜がないことに加えてもうひとつウイルスのだいじな特徴は・・・

自分だけの力では複製できない、ということ。

 

遺伝子としてDNAとかRNAを持っているのに、自分だけでは増えられないんです。

なんてこった。

じゃあどうやって増えるのかと言うと、宿主(ヒトなど)の細胞に入り込んで、

通常 細胞がRNAからタンパク質を作る仕組みを間借りして

自分のタンパク質を増やしてもらいます。

 

つまり、ウイルスは

自分自身はシンプルな構造だけを持っていて

いろんな機能を宿主にシェアしてもらって、増殖していくわけです。

いらないものは断捨離してレンタルとかシェア系で生きてる、けっこう今どきなやつです。

 

そんなわけで「細胞膜」がなく、「自己複製」ができないウイルスは

遺伝情報はもっていますが、菌のような生物じゃない・・・ということなのです。

 

ふと気づきましたが

「アンパンマン」の世界には「ばいきんまん」はいますが

「ウイルスマン」はいませんね。

 

やはり、やなせたかし先生にもウイルスは「生き物」認定されなかったのかしら・・・なんて勝手に妄想。

「殺菌」と「抗ウイルス」

細菌とウイルスの違いがわかってきたところで・・・

よく消毒剤や石鹸などに「殺菌」と書いてありますが

それってウイルスにも効くのかな?という疑問が湧いてきます。

 

だって、細菌感染症に効く抗生物質は

ウイルスに効かないでしょ?

 

 

さて殺菌作用があるものの代表格は、エタノールですね。

エタノールやイソプロパノールなど、アルコール系で分子量が小さい物質は

以前「なんでアルコールなん?」で説明したように、

油でできた細胞膜に穴をあけて、菌を直接とかしてしまうという作用があります。

これが「殺菌」です。

同時に、水にも油にもとけるので石鹸と同じような働きをして、手などについているウイルスを除去しやすくします。

これは「除菌」ですね。

 

さきほどウイルスの構造をご説明しましたが

油でできた膜を溶かすのが「殺菌」であれば、

油の膜がないウイルスは「殺菌」効果があるものでやっつけられないのでは?

 

そう、エンベロープがなくカプシドが表面に出ている「ノンエンベロープウイルス」は、

基本的にアルコールなどが効きにくいとされています。

油の膜がないからですね。

 

一方、コロナウイルスを含む「エンベロープウイルス」の場合

アルコールが膜を壊してウイルスにダメージを与えることができるので、有効とされています。

消毒薬いろいろ

アルコールなどの「殺菌効果」があるものはコロナにも効く!ということがわかったところで

そういえば、なんか色んな種類の消毒薬が売られてるけど・・・どう違うのかな?

という疑問もわいてきます。

 

揮発性のニオイがメインのものは

たいていアルコール(エタノールまたはイソプロパノール)を主成分としています。

70%前後の濃度がもっとも殺菌作用が強いと言われています。

濃度が80%を超えると、逆に菌を溶かさなくなるそうです。

実はアルコールがどんな風に「殺菌」するのか、詳細な作用機序はよくわかっていないようです。

調べてみてびっくりしたのですが・・・。

 

ほか医療用(特に手術前後など)に用いられるものとしては

4%クロルヘキシジン(ヒビテン)や7.5%ポビドンヨード製剤(イソジン)があります。

 

さらにこれらの物質を70%アルコールに混ぜた製品や、

病院などでお見かけする「アルボナース」など塩化ベンザルコニウムをアルコール溶液に加えたものなどが市販されています。

 

 

なんかアルコールっぽくないけど、この消毒薬大丈夫?って思ったときは

容器のウラをみて成分を確認してみてくださいね。

 

 

ちなみに次亜塩素酸は、手指の消毒にはあまり使いません。

つけ置きや拭き取りには非常に効果的だと思います。

直接手に触れると、相当手荒れしますので・・・

ハイターを薄めて手を洗ったりはしないでください><

 

 

【参考リンク】

・国立国際医療研究センター病院 細菌とウイルス

・中屋敷均 / 分子生物学 生物と非生物の境界、ウイルスとは何か

ウイルスとは?-生き物との違いとコロナウイルスの増殖機構-

・サラヤ業務用製品情報 「感染と予防」 コロナウイルス

 ・花王プロフェッショナルサービス 「ハイジーソリューション」 生体消毒法 

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コメント: 1
  • #1

    K,MATSUI (木曜日, 28 5月 2020 23:00)

    わかりやすい✨(´▽`)✋説明ですねっ。適材、適所、適濃、適量…でしょうかねっ(´▽`)ノ。私も、�気を付けます!(;^_^A…<(_礼_)>